2011年1月1日土曜日

TA とか RA とか

役所が TA(Teaching Assistant)に予算を付けたのはほんの数年間しかなかったような気がする。この役所は米国等のシステムのうわべだけを真似る。というのも,財務省に対して最も力が無いからというもっともらしい噂がある。もちろん元々の米国の TA の仕事はかなりきつい。米国では宿題がほぼ毎週あるし定期試験も複数ある場合があるからだ。RA(Research Assistant)は,僕がアキレス腱を切ったときにボスが「週 20 時間は研究してますか」と言ったから,システムとしてはきっとそのくらいの負荷だったのだろう。いずれにしても,目に見える成果を出すことを約束した上でボスが授業料を払ってくれて生活費をくださる。
法人化後役所は研究費を毎年 1% ずつ減らしてくださる。大学とは関係の無い方の誤解の無いように書いておくが,教授・助教授・助手 3 人の一研究室単位で,教室の共通経費・光熱費等と消耗品・備品・出張(国内外)・図書・コピー等の全費目合わせて,年間 200~250万円程度だ。大きな実験はできない。しかしこれは法人化前の規模であり,幸いなことに僕が所属する工学部の現状だ。実は法人化後にトップダウンの運営のために各長の裁量経費が増え,学部によっては研究室単位で 100 万円にも満たない所があるらしい。そのため外部資金獲得が教員の重要業務になっており,それが成果としても評価される。だから教員は集金で多忙なんだそうだ。表に出る報告書等に「教育・研究に当てる時間が無くなっている」と平気で書くくらいだ。さてそれなのに,その外部資金から学生を補助することができない規則になっている。
先に述べた米国の場合の RA 経費は外部資金からだ。お金の確保ができない役所が,お金を獲得できる教員の研究とそれを援助する学生のために,規則を緩和することを考えようともしないのは何故だろう。理解できない。とはいえ,そうなったとしても,外部資金獲得が難しいいわゆる基礎研究をしている先生は,博士課程の学生の確保が難しい上に,ご自分のボーナスが学生の学会出張旅費に消えるという状況(実際にそういう先生がおられるという噂がある)になる。奥様は怒っておられるだろう。米国の軍事予算は大きい。しかし,そのある部分は大学(日本も含んで)の研究者に外部資金として配られる。しかも,基礎研究のようなものにも配られている。これも噂だが,研究支援するにしても数撃たないと当たらない,つまり多くの研究を援助して一つでもいい芽が出ればいいという立場なのではないか。そういう意味で,我が国の政府と官僚は教育にはあまり熱心ではないのだろう。予算配分を見ると技術でも科学(某総理のわがままによる一部の高額研究を除く)でも教育でも立国なんかできそうもない。