2016年5月21日土曜日

quarter 制度

    表面的な猿真似のシステムが導入されようとしている。しかも,大きな枠組みを再検討することはしない。つまり,今までの 1 学期を前半・後半に分けて,一つの科目を週 2 回開講するだけだ。たたき台を見た。どうなっているか。
    1 年生の Spring quarter には,物理学や化学等の基礎となる数学の線形代数 A と解析学 A が提供される。しかも,クラスによっては連日という疲労を促進する日程がある一方で,中 2 日空いた緊張感の無い日程もある。そして Pre-summer quarter には,物理学・化学が並ぶ。使う数学を教えた上でそれを利用するという思想らしいが,semester 制のときはこれが並列だった。道具を習いながら使い方を学ぶ(前後関係は逆転することも多いが数学物理学演習という科目で補足はされている)のがいいか,道具だけを教えてもらって,そのあとに使うのがいいか。さて?
    入学直後に高校とのレベルの差に驚きながら訳もわからず難しい数学を学んで,6 月から夏休みが終わるまでの四ヶ月余り,数学からは遠ざかっておいて,さて Fall quarter になると,また線形代数 B と解析学 B が提供される。もはや線形代数 A の知識は頭の中でさびついていて,思い出すのも困難だ。そして次の winter quarter にはまた数学が無くなって物理学・化学である。
    カリキュラム再編の検討もなく,単なる時間割の変更である。米国の quarter 制(実際には,11 週(我が国の約 1.5 倍)の 3 学期制であるが)が成立しているのは,文化が違うからだと僕は感じているが,そういう話は出てこない。
  • 2 週に一つくらいは宿題が出る。
  • 文系や基礎科学の場合は週末に本を読まなければならないらしい。
  • 宿題で,他人のコピーをする文化はあの国には(多分標準的には)無い。
  • 板書は丁寧で,それを写したノートはあとでゆっくり読める。80 ページを越える,読んで理解できるノートができあがる。教科書は要らないくらいだ。
  • 休講は無い。
  • 試験は場合によっては 3 日くらいの take-home exam もあるが,これもカンニングは無い。
  • 2 quarter 連続して成績が B を下回ると退学になるという緊張感がある。
  • そもそも大学教育の目的は人を育てること。我が国のどこかの学部のような職能訓練学校・研究成果製造工場ではない。
などなど,我が国では実現できていないような文化の上で成立しているシステムにしか見えないのであるが,さてどうなりますことやら。あと数年すると何か見えてくるでしょう。