我が国にはあまりこういったデータベースが無いように思う。TV 番組があったが,さほどウィットに富んでいるものでもなかった。B 級(ま,ちょっとマニアックなという意味で)グルメとかに殺到するのに,種々の事項の裏にあるマニアックな情報を集めて仲間うちで楽しんだりはしない。米国には TV や映画等に関する著名なトリビア本がある。邦訳もされているが,例えば Mr. Bond の好きな飲みものとか,**という映画に出てくる警官のバッジの番号とか,超 B 級な情報が満載である。何の役にも立たないし,知っていても自慢にもならない。一部の人しか知らない。ネットの映画のデータベースにもそういうトリビアが羅列されている。僕が大好きな,世界一のミュージカル映画 `The Blues Brothers' も,例えば「無意味に壊した車の数の世界レコード保持(『無意味に』は僕が加筆)」とか,「主人公の運転免許証の番号がイリノイ州の規則に忠実である(?)こと」「領収書の住所は・・・」等である。映画館でこれに気付くことはほぼ不可能だろう。
日本人には余裕が無いのだろうか。あるいはこういう,最近呼ぶところの「ヲタク的」なものを嫌うのだろうか。実は裏にあるのは,例えば映画を製作する人がどのくらい「楽しく仕事をしているか」を表す指標なのではないかと思っている。上のような情報からは,映画を製作する人が連続徹夜で仕事をしながら一所懸命工夫して,「ふっふっふ,こんなところには誰も気付かないぞ」とほくそ笑んでいる姿が見えてくる。
インターネットがここまで普及する前,各種便利なソフトをフリーで公開配布する人がいたが,そのバイナリのファイルを無理やりエディタで覗くと,データエリアに「このソフトをダウンロードした人は・・・」といった落書きがされていたりした。添付の著作権ドキュメントにも「これはフリーで使えるが,使う前に東に向かって二回おじぎをして・・・」みたいなのもあった。僕も,LaTeX で使える外字を作るソフトを公開配布したことがあるが,画面のある箇所を押すと「マインスィーパー」になるようにした。
組版ソフトの TeX は米国数学会の商標でもあり,Elsevier への投稿もそのままできて校正不要になる等の便利でフリーのすばらしいものだ。これを作った人が出しているマニュアルの索引には有名な遊びがある。日本の出版社なら多分許さないだろう。僕は,ネット配布の講義ノートで真似をしている。仕事を楽しみながらやるという余裕は,我が国にはあまり無いのかもしれない。大学人くらいは遊びながら仕事をしたらいいのにね。